2008年12月08日

お気に入りの映画(「ライトスタッフ」)

  今日はお気に入り映画で「ライトスタッフ」について書いてみたいと思います。「ライトスタッフ」は1983年のアメリカ映画で監督はフィリップ・カウフマン。1979年に出版されたトム・ウルフによる同名のドキュメンタリー小説を原作としています。(日本では中公文庫で出ていますね)


  第56回アカデミー賞において作曲賞(ドラマ)、編集賞、音響効果賞、録音賞の4部門を受賞しました。
「ライトスタッフ」とは「正しい資質」のことです。この映画はNASAのマーキュリー計画(宇宙に人間を送り出す国家プロジェクト)を背景に、戦闘機パイロットが「ライトスタッフ(己にしかない正しい資質)」に従い孤独な挑戦を続ける姿と、国家の重圧に耐えながら信頼の絆を深め合う宇宙飛行士と家族の姿とを対比して描くことで、別々の生き方の中にも勇気を持って行動する者達を称えた物語です。音速の壁に挑戦し続けた実在の人物、チャック・イェーガーをサム・シェパードが好演しました。


 
ストーリーは1947年のアメリカ、砂漠の中の空軍基地から始まります。テストパイロットのチャック・イェーガーはロケット機ベルX-1を駆り、ついに音速の壁を破ります。基地にはパイロットが続々と集まり、速度記録も上がっていきますが、事故は止むことがありませんでした。やがて、ソ連のスプートニク1号打ち上げ成功のニュースが届き慌てた政府は、軍から宇宙飛行士候補者を募ることにします。イェーガーや仲間は拒否しましたが、他のパイロットらが応募し、厳しい検査を経て7人=「マーキュリー7(セブン)」が選ばれます。


 
NASAへの不満、意見の対立、ユーリ・ガガーリンの成功等を乗り越えて宇宙へと飛び立った飛行士達は、世間の注目を集めていきました。イェーガーはソ連が持つ高度記録に挑むため、一人で最新鋭機NF-104を駆り上空へ飛び立ちますが、星々を目の前にしたところで制御不能になり墜落。負傷しながらも脱出し、同僚らの元に帰ります。その頃、マーキュリー計画は、「ライトスタッフ」7人の中で最後に残ったゴードン・クーパーが宇宙へ飛び立ち、「アメリカ人最後の宇宙単独飛行」を以って完了します。

  この映画では「アメリカ初の宇宙飛行士」に焦点をあてていますが、観客はむしろテストパイロット、チャック・イェーガーに魅せられます。サム・シェパードがカッコイイのはもちろんですが、イェーガーの孤高の生き方に共感する人も多いのではないでしょうか。彼は「音速の壁を破った男」でNASAが宇宙飛行士の候補に選ぶのですが、自分が操縦できずに「打ち上げられる」だけの役割(=「実験室のネズミ」)でしかない「宇宙飛行士」になることを拒否してしまいます。


  アメリカ中が「マーキュリー計画」に耳目を集中させている中で彼は一人、NF−104を駆って高度記録に挑みます。そして高度記録を達成した直後に制御不能となるのですが、このときの演出がすばらしくて、イェーガーの目に大気圏外の星々が垣間見えるのです。それはイェーガー自身が自ら拒否したことで道を絶たれた、星への旅がほんの少しだけ叶えられた瞬間でもあったからです。彼は高高度から射出座席により脱出し、奇跡的に生還します。その際、射出座席の火薬により顔に火傷を負うのですが、砂漠を歩いて生還する姿には、まさしく「孤高に満ちた男」の誇らしさが描かれています。


  イェーガーについて書いてばかりいますが、もちろんマーキュリー7の7人の宇宙飛行士もカッコイイです。というか、男の野心(野心などというと胡散臭いイメージがつい回るところもあるのですが)がカッコ良かった時代の映画なのでしょう。イェーガーに比して随所にコメディタッチな部分があることは事実ですが、それでもジョン・グレン(演じるのはエド・ハリス)やアラン・シェパード(同じくスコット・グレン)、ゴードン・クーパー(同じくデニス・クエイド)たちの誇り高い姿は見ごたえがあります。


  訓練は厳しいし、NASAは彼らをイェーガーが考えたとおり「実験室のネズミ」のように扱います。しかし彼らには自分たちが「最高のパイロット」である、という自負と誇りがありました。彼らは連帯して、彼らを実験動物的に扱うNASAの科学者、エンジニアに抵抗していきました。


  そしてラスト。ゴードン・クーパーはジェミニ5で190時間56分の耐久時間の記録を樹立しました。ナレーションが重なります。「この瞬間、正しく彼は最高だった」と。


  
本作は日本公開時には2時間40分、ビデオ発売時には3時間13分という長時間の映画ですが、全編を通じて「男(むしろ「漢」とかくべきでしょうか)」の誇りが描かれていて秀逸な作品だと思います。


  
そういえば、同じく初期の宇宙開発のパイロットたちが老齢になったあと、宇宙に行くことを目指す、というテーマの作品で「スペース・カウボーイ」がありましたが、この作品の中で老齢のパイロットを指して「Ripe−Stuff(直訳すれば「熟れた資質」・・・「恍惚の資質」とでも訳すのでしょうかね)」という言葉が出てきます。これはもちろん「Right−Stuff」のパロディというかオマージュですね。(「スペース・カウボーイ」も好きな作品の一つです。いずれ書いてみたいと思います)


  
「ライトスタッフ」は音楽も良くて作曲はビル・コンティが担当しています。ビル・コンティといえば「ロッキー」のテーマが有名ですね。ラストはどこかで聞いた感じだな、と思っていたのですが、あとでチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」だと気付いた記憶がありました。その他にもホルストの「惑星」に似た曲も使われています。


  
長くなりましたが、「ライトスタッフ」は元気が出る映画の一つです。男っぽい映画がお好きなら是非一度、ご覧になってください。

posted by 末さん at 09:00| 東京 雨| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ・映画関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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